テキストサイズ

花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第9章 花いかだ 其の弐

 随明寺の境内にも―確か絵馬堂の近くにも咲くはずだ。気高い美しさを持ちながらも、同時に艶やかなこの花は、何となくおれんにふさわしいような気がした。
「―おとっつぁん、良かったわね。おめでと」
 唐突に娘に祝福され、弥助は眼を瞠った。
「おい、他には何も知らなくて良いのか? 曲がりなりにもお前のおっかさんになる人だぞ?」
 と、美空は大人びた表情で笑う。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ