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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第10章 花いかだ 其の参

 ただ一つこの場合、気がかりなのは、美空の気持ちであった。美空は徳平店で産声を上げ、十二の歳まで育った。長屋の住人にも可愛がられて育ち、徳平店は、いわば、美空を育んでくれた場所でもある。
 その徳平店を出て、他の家に移るということは、もしかしたら、美空には不本意かもしれない。ゆえに、この件については慎重に話し合う必要がある。でき得る限り、美空の心を、想いを尊重するような結論を出したい。

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