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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第10章 花いかだ 其の参

「いや、酒はもう良い。それよりも、美空にお前のことを話したんだ」
 先ほど帰ったばかりの客がいるときはできなかった話がやっとできる。
 人足風の二人連れは共にまだ若く、独り身らしい。弥助よりは大方、ひと回りは年下だろう。二人共、愛想の良い男で、途中からは徳利を引っさげて弥助とおれんのいる奥まった席までやってきた。
 それから帰るまではずっと彼らが同席していたため、肝心の話は何もできなかったのだ。

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