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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第10章 花いかだ 其の参

 少しだけホッとしたような様子のおれんを見て、弥助もまた、胸を撫で下ろした。
 そのときである。表の障子戸が音を立てて開いた。
 おれんが小首を傾げる。
「おかしいわ、今夜は少し早いけれど、もう店じまいにしようと思って表の掛行灯も火を落としたはずなのに」
 訝しげな面持ちで振り返ったおれんの眼が見開かれる。見る間に強ばったその横顔に、今度は傍らの弥助がつられるように振り返った。

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