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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第10章 花いかだ 其の参

 お民が大急ぎで帰っていった後も、おれんは魂のさまよい出た抜け殻のようにボウと突っ立っていた。
―馬鹿な。そんなことがあるはずがない。
 弥助が死ぬなんて、あるはずがないではないか!
 昨夜、弥助はあんなにも元気そものだった。
―あたしのせいだ。
 おれんの脳裡に昨夜の出来事がよぎる。あの時―三笠屋藤次郎とくんずほぐれつの喧嘩になった時、弥助は弾みで後頭部を机にしたたかぶつけた。

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