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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第10章 花いかだ 其の参

 弥助の生命を奪うことになったのは、恐らくはあの一瞬の出来事に相違なかった。
 おれんは、その場にくずおれた。自分と知り合うことさえなければ、おれんに出逢うことさえなければ、弥助は死なずに済んだのだ!
 そう思っただけで、おれんは後悔と申し訳なさで心を引き裂かれそうになった。
 弥助の死を知らせてくれたお民は人の好さそうな女だった。お民が嘘をついているはずはないことは判っているけれど、それでもなお、おれんには信じられなかった。

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