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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱 

 真冬だというのに、木綿の継ぎはぎだらけの粗末な着物は薄っぺらで、裸で歩いているのではないかと思うほど、戸外の寒さをよけてはくれない。
 千汐は両手をすり合わせながら、少しでも暖を取ろうと思いきり息を吹きかけた。
 吐息が夜気に細く白く溶ける。それは、夜空に束の間開いて散る白い花のように、儚く瞬時に消えた。

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