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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱 

 だが、千汐のような女には、ひとかけらの希望どころか、明日という未来さえ覚束ない。ましてや、来年のことなぞ今から考えるゆとりなぞ毛頭ない。いや、来年といわず、明日の日さえ知れない―それが、夜鷹にまで身を堕とした女の隠しようのない現実なのだ。その日その日を生き、凌いでゆくのが精一杯の己れに明日を夢見ることが許されるはずなどないではないか。

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