花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱
おきくは江戸近在の貧しい農村から出てきた娘で、十七であった。歳も近しいことか、何かと千汐の傍近く仕えて身の回りの世話もしてきた。おさよは、千汐が二つのときから母代わりとして育ててくれた女だった。おさよは実の母が与えてはくれなかった愛情を千汐に与えてくれた、たった一人の存在である。
が、おきくもまた、泣く泣く在所の村に帰り、結局、おさよと千汐は二人だけになった。見るからに眼に険のある人相も悪い男たちが連日、表に押しかけてくる。
が、おきくもまた、泣く泣く在所の村に帰り、結局、おさよと千汐は二人だけになった。見るからに眼に険のある人相も悪い男たちが連日、表に押しかけてくる。