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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱 

 聞くに堪えない罵声を上げながら、きっちりと閉ざした板戸を蹴りつけるのを、千汐とおさよは互いにひしと抱き合い震えながらやり過ごしていた。
 家財道具はすべて持ち運ばれ、何一つ失ってしまった身には、その日の糧さえ満足には得られなかった。おさよがどこからともなしに調達してきたわずかばかりの米で薄い粥をこしらえ、それで何日も凌いだ。

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