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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱 

 千汐は何も知らぬ、いや、知ろうとしなかった自分を恥じた。破廉恥で恥知らずの母親と無知すぎた自分を憎んだのだ。
 だが、母への憎しみも長の年月の中には、いつしか消えていった。いや、消えたという言い方は正しくはない。あまりにもそれまでとかけ離れた現実の連続に、最早、恨みや憎しみなどといった余分な感情を感じることさえできなくなっていたのだ。

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