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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱 

 が、初めて客を取る初夜に、相手の客を嫌い、逃げ出そうとした。あの夜の屈辱とおぞましさを、千汐は今でも忘れようとしても忘れられない。
 客は五十過ぎの、やたらと額が脂ぎっていた男だった。いかにも助平そうな顔で、分厚い唇までもがてらてらと光っていたのが気持ち悪く、その唇で乳房を吸われたときには、思わず嫌悪感で失神しそうになった。

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