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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱 

「あたしには、ちゃんとあんたが来るのが見えてたから」
 千汐は短く言って、首を振る。そのまま男をやり過ごし、向こうへと歩いてゆこうとしたのを、ふいに背後から手首を掴まれた。
「もし」
「―」
 千汐が振り返ると、男が慌てて手を放す。
「す、済みません。初めてお逢いする方に失礼なことを」
 千汐は改めて間近で男を見上げた。

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