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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱 

 見上げた―というのは、男が千汐よりは頭一つ分以上、身の丈があったからだ。声からして若い男だろうとは思っていたけれど、想像よりは更に若い。多分、二十二、三、千汐とたいてして変わらない年頃だろう。
 顔立ちはたいして男前というほどではないけれど、何というか、心のきれいさを物語るかのような瞳が印象的だった。
 こんなに澄んだ眼をした男を、千汐は見たことはなかった。―いや、それをいえば、ここまで男の顔に見入ったことなど、かつてあっただろうか。

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