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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱 

 我ながら何とも素っ気ない口調だとは思うけれど、致し方ない。常であれば、こんないかにも世慣れぬといった若旦那風の男を見つければ、絶対に逃しはしない。とびきり上等の〝営業用〟の笑顔を貼り付け、どこかに引きずり込むまで放しはしないだろう。
 だが、今夜は、もうこれでおしまいにするつもりだった。夕刻から降り始めたこの忌々しい雪のせいで、こちとら商売あがったりだ。

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