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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱 

―馬鹿だね。それが手管なんだよ。
 千汐は心でそう思ったけれど、何も言い返さなかった。第一、おつな(お督)は、夜鷹とはいえども、結構上客がついていると評判だ。何とも言えぬ色香を漂わせているところが、男心をグッとそそるらしい。
 おつなは昼間は一軒家を構えて、常磐津の師匠なぞをしながら、夜な夜な辻に立つという一風変わった女だと聞いていた。昼間の仕事もそれなりに繁盛して、大店の娘たちが通ってきているというのに、何を考えて夜鷹なぞをしているのか、千汐には気が知れない。

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