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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱 

 要するに、おつなは客を選べる夜鷹なのである。千汐のように、生理的に嫌悪感を感じる男でも、男であれば眼を瞑って我慢するというか、相手を選べないような身分とは違う。この男には申し訳ないが、このような世間知らずのいかにも坊ちゃんといった風情の男が、男を知り尽くしたおつなの眼がねに叶うとは思えなかった。
 おつなの好みは、一癖もふた癖もある男―つまり、世間も遊びも知り尽くしたような、大人の男なのだ。間違っても、眼の前の青臭い若者ではないだろう。

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