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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱 

 恐らく、おつなには端から男と寝るつもりなど、さらさらなかったに相違ない。世慣れたおつなの眼には、この若者は襁褓の取れぬ赤児ほどにしか見えなかったろう。
 この男はからかわれたのだ。女の方に最初から気がなかった―若者を男として見てはいなかったのだとは判っていたが、待ちぼうけを食わされてしょげている男に、それは言いかねた。
「そうか、私はフラレちまったのか」
 今更のように納得して、一人でうんうんと頷く男の呑気さに、千汐は呆れた。

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