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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐 

 皆、この世の地獄を見れば良い。生きながら苦悶にのたうち回り、死の恐怖に怯えて余命を生きるが良い。
 むしろ、自分の身体を好きなように扱う男たちに対して、そんな復讐めいた気持ちを抱き、溜飲の下がる想いだった。
 だが、この男に対してだけは違った。どうも、これまでのようにはゆかない。この澄んだ眼をした若者に、揚々たる前途を持つ男の未来をむざと曇らせたくはないと思ってしまうのだ。

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