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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐 

 すべてを語り終えた後、千汐は淡く微笑んだ。
「ま、あんたが信じるかどうかは判らないけどね」
 吉原の遊廓にいた頃から、そうだった。客が女郎の身の上話など本気にするはずがない。廓で交わされる男女の間の睦言はすべてが嘘。嘘と虚飾で塗り固められた美しい夢の世界、それが吉原遊廓なのだ。一夜限りの夢は、夜が明ければ、必ず醒める。

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