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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

 千汐はまるで自棄になったかのように、日に何人もの客と寝た。死に物狂いで男に取り縋り、自ら脚をひらいた。それはまるで、男に逢えぬ淋しさを紛らわせようとでもするかのようでもある。千汐は自らを追い込み、急き立てるかのように町へ出て、男の袖を引いた。
 そんな風にして日々は過ぎゆき、やがてその年も暮れ、新しい年になった。
 鶯が覚束ない啼き声で囀り始め、梅の花の蕾がひらく頃、千汐は自分の身体の内に新しい生命が宿ったことを知る。

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