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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

 懐妊を知ったその日、千汐は狼狽えて指を折った。もし、腹の子があの男の子でなかったら―と考えただけで、怖ろしさと絶望に気が狂いそうになる。千汐が曽太郞と膚を合わせたのはたったの一度きりなのだ。名も知らぬゆきずりの男を捕まえては、身体を重ねていたことを思えば、むしろ腹の子の父親が曽太郞である可能性の方が少ないといえた。
 が、必死で日にちを数えていた千汐の白い頬にうっすらと紅みがさす。

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