テキストサイズ

花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

 父親の判らぬ子を身籠もる―、それが身体を売って生きる女の悲哀であり、業でもあった。現に、千汐自身、吉原でもまた、夜鷹になってからも、人知れず身籠もり、父親の知れぬ子を生むわけにはゆかぬと凍えるような冬の宵、冷たい川に入って子を流した女を何人も見てきた。
 怪しいげな堕胎薬をを呑み、腹の子ばかりか、子を堕ろした当人までもが落命したという悲惨な話も見聞きしている。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ