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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

 そんな女たちの疑問は当然のことだ。誰もが、こんな生活に見切りを付けたいと願いながらも、どうにもならず、同じことの繰り返しの中でもがいているのだから。
 それはともかく、おつなの弟子の一人に、一膳飯屋の主人がいた。三十前で数年前に女房に死に別れた男で、常磐津を習いたいというよりは、おつなの色香に血迷って、あわよくばとそちらを目当てで通ってきているという下心の見え透いた男だ。

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