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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

「安平太」
 と、古参の大番頭の名を呼び、曽太郞はゆるりと首を振った。
「いや、良いよ」
 が、安平太があまりにも物問いたげな顔をしているので、仕方なく続けた。
「風鈴を外して貰えないかと思ってね。もう九月末だ。今時になって、風鈴もないだろう」
「は、承知致しましてございます」
 安平太がすぐに立ち上がるのを、曽太郞は止めた。

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