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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

「誰か若い者にやらせれば良い。あそこの風鈴は結構高いから、台に乗らなきゃならねえ。うっかり年寄りが転びでもしたら生命取りだぜ」
 そう言った後で、溜息混じりに言った。
「情けねえ有り様になっちまったな。自分で風鈴一つ外せねえ、この体たらくだ」
 その口調には自棄のような響きが込められている。
 安平太は依然として愁いを濃くした顔で、若い主の顔を気遣わしげに見守っていた。

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