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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

 おつなは励ましてくれるけれど、恐らく、自分はもう長くはない。千汐の生命の焔は今、蝋燭の焔が静かに燃え尽きてゆくように、消えようとしている。
 死ぬのは怖くはなかったけれど、たった一人残してゆく真平のことだけが気がかりだった。
 あたしは本当にあの男に逢えるのだろうか。
 この生命の火が消えるその瞬間までに。

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