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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

 もしや自分は一生このまま不具として生きてゆかねばならないのか。不安と焦燥に駆られ、何度も挫けそうになりながらも、何とか障害を克服できたのは千汐に逢いにくるその一念があったからこそだ。
 右の下半身を動かすようになるまで、実に六年かかった。六年ぶりに石のようだった右脚が動いたのは、今年の夏のこと。すぐにでも千汐に逢いにきたかったけれど、まだわずかに動かせる程度で、歩くにはほど遠い。

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