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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

「おっかさんは元気でいるかい」
 逸る心を抑えかねて訊ねると、ふと男の子が視線を揺らした。
 この瞳には見憶えがある。
 千汐と一夜を過ごした折、千汐がこんな眼をして曽太郞を見上げたことがあった。
―私は信じるよ。お前の話には嘘はねえ。
 千汐の身の上話を初めて聞いた時、千汐はどうせ信じやしないだろうと曽太郞に挑発的に言った。
 その時、曽太郞自身が千汐に言った科白だ。

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