テキストサイズ

花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

 曽太郞が千汐をじっと見つめていると、千汐は狼狽え、一瞬、視線を揺らした。
―へえ、じゃあ、これでも、まだ、あたしを信じられる?
 千汐は着物を落として、白い蠱惑的な裸身を惜しげもなくさらし、更にその白い膚に刻まれた頼病の証―紅く爛れた患部をも曽太郞に見せた。
 あの日、曽太郞は千汐が不治の病、しかも極めて伝染の危険性の強い病に取り憑かれていると知った。しかしながら、なお、曽太郞の千汐に対する想いは変わらなかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ