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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

「おっかさんは死んだよ」
「死んだ? 千汐がまさか―」
 烈しい衝撃が脳天を貫く。
 予想外のなりゆきに、意識が一瞬、空白になった。
 確かに患ってはいたが、まさかこんなに速く逝くとは考えたことはなかった。
 千汐はここに来れば、いつでも笑顔で自分を迎えてくれるとばかり思い込んでいた。
 約束したじゃねえか。必ず迎えにくるからって、一緒に海を見にいくんだ、お前の親父さんの生まれ故郷の村を訪ねるんだって。

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