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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

 千汐が亡くなってからは、この子が母親の代わりに、ここで地面に母から教えられた父親の名前を書きながら、ずっと待っていたのだろう。
 曽太郞は子どもの両肩を掴んだ。
「いつのことだ? おっかさんが死んだのは」 あまりの見幕に、子どもの瞳に怯えが走った。
 曽太郞は自らに落ち着けと命じ、できるだけ優しい声音で子どもに問う。

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