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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

「私がお前のおとっつぁんだよ。―おっかさんを必ず迎えにくると約束していたんだが、どうやら遅すぎたようだ。教えてくれ、おっかさんはいつ、亡くなったんだい」
「十日前の朝。おいら、いつもおっかさんの隣で寝てるんだけど、朝、眼が覚めたら、冷たくなってた。幾ら呼んでも、もう眼を開けないんだよ。揺さぶっても、起きないんだ―」
 子どもの眼に見る間に涙が盛り上がった。
「今はどうしてる?」
 曽太郞の問いに、子どもはうつむいた。

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