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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

「おっかさんの知り合いのところにいる」
「―そうか。そのお人にもちゃんと後でお礼を言わなくてはならないな。お前の名は」
「真平。この名前、おっかさんが付けてくれたんだ。真心の真だから、真平なんだって、おいらには難しくてよく判らないけど、おっかさんいつも嬉しそうに話してた」
 子どもは洟を啜りながらも、どこか誇らしげに言った。
―千汐。
 曽太郞は込み上げる涙を抑え、女の名を呼んだ。

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