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ーside by 雅ー

心乃が出て行った直後、陸が来た。


そして俺の向かい側に座ると、ぼーっとし始めた。


しばらく沈黙が続く。





「…俺、どうやって説得すればいいのかわかんねぇんだよな」


俺は正直に打ち明けた。


朝川千鶴は、簡単には婚約破棄をするとは思えない相手だ。


初めて会ったとき、はっきりと断ったつもりがいとも簡単にすり抜けられてしまった。


言葉で彼女を納得させることはかなり至難の業だろう。


でも、心乃のことは諦めたくない。


初めて、一生大切にしたいと思えた相手なのだから。


「俺に聞くか？それ…

本音言ったら、お前に心乃のこと渡すなんて嫌なんだかんな！


それをまったく…」


頭をぽりぽり掻きながら、しかしさほど嫌な顔をしていない陸。


なんだかんだ言って話を聞いてくれる奴なんだな、こいつは。


「あー…そうだったな。悪い」


「あのさぁ、無理やり説得したって無理なんだろ？金持ちは融通きかなそうだもんな！」


悪気なしでこんなこと言う陸に、なぜか俺は腹が立たなかった。


確かに、金でなんとかなるって思ってる奴が多いかもなと納得できるからだ。