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陽だまりの仮面 -嘘-

第7章 夕陽と泪味

花木君からも何も話をするわけでもなく。

私からも何か発するわけでもなく。

花木君がどこを見て、何を想ってるのかも当然分からないんだけれど


それでも、山間の夕陽が深くなって。

徐々に深緑だった木々を朱や金色に染めつつある紅い夕陽と

ポツリと1粒だけ輝く1番星を眺めながら

ただ、ひたすら花木君の隣りに座ってボーッと過ごす時間が結構幸せで。


何ら会話を交わす事はないんだけれど


さっきまで、会話を交わさない事に焦ってた自分が嘘のようだ。


1日の流れで、空が蒼から朱に変わる事は天気が良ければ毎日の如く繰り返されてるはずなんだけど

空をこんなにゆっくり眺めたのって、いつブリだろう…。



「ねぇ」



紅い空を愉しんでると、隣りから声が降って来て。



「え?あ、何?」



花木君の方に視線を流して、彼を見上げる。



「あのさ、本とか読んだりします?」


「本?」



彼は私の方に視線を向ける事もないまま、空だか山だか分かんないけど

少し遠くを見ながら話す。




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