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陽だまりの仮面 -嘘-

第8章 夕陽と泪味 ②

「他に、何かされなかったですか?」


「あ、うん。他には何も」


「そうですか」


“なら良いですけど”って。

“心配しましたよ”って首を傾げ優しく微笑む花木君がとても優しくて。

胸の奥がジーンと暖かくなる。




……あ、そうだ。




「花木君、あの…来てくれてありがとう」


花木君が来てくれなかったら今頃まだバカ橘とあーだこーだやってたかもしれない。

アイツに負ける事はないと思うけれど。

いざとなれば…って考えてたけれど


でも、



「来てくれて良かった」


嬉しさと照れ臭さで、エヘヘと笑って見せるあたしに、花木君は何故か1つ深い溜息。



「当たり前でしょう」



へっ?



「琉愛がここに居る事、僕は分かってるんですから」




「……え?」





花木君…?




「ここで僕を待ってるって、教室出る時君が言ったじゃないですか」


「あ…、うん。言った」



言った。……けど



「でも、鍵締まってたのに…」



そうだよ。

バカ橘が図書室の鍵、閉めてたし。

声も音も出せないように口も身体も橘に封じられてたのに。

花木君がココに来た時、無音だったし。



しかも……



花木君、図書委員じゃないし。

図書委員ってクラスで1名だし。

その委員、あたしだし。


なのに、




「なんで…?」



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