君に恋した冬
第7章 大事なもの
そのまま隣に腰を下ろし由梨の肩に手をまわす
『は…なして』
ズキズキ痛む心と、
触れられてドキドキする心が混じって苦しくなる
「いいから黙ってろ」
おもむろに携帯を触りだしたかと思えば
なんと電話をかけ始めた
しかもスピーカーにして…
Trr…Trr…
呼び出し音が鳴り響き
ガチャッと相手が電話を取った音が聞こえた
嫌…!聞きたくない!!
自然にそう思って目をギュッと瞑ると
電話の向こうから少し酒焼けしたような声で
「はい!【saki】青山店です!」
と声からして30代くらいの女の人が出た。
saki…青山店…?
訳が分からずアキラを見ると
アキラは意地悪そうに笑ってこっちを見ていた
「あ、店長?電話、どうしたんすか?」
「あぁ!アキラ?シフトの事なんだけどー」
店長?saki?
え、お店の名前?
しばらくして電話は切れた
アキラの細い指が私の顎を掴んで
クイッと上を向かせる
アキラは意地悪い顔を浮かべて
「さぁ問題です。sakiとは何のことでしょう。
1、女の名前
2、店の名前
3、『も!もうわかったから!!』
言い終わる前に、恥ずかしくて止めてしまった
『ごめんなさい…』
完全な早とちりだった。
わかった途端、恥ずかしくて顔が一気に熱くなる
ただそれと同時に、アキラに酷いことを言ってしまったと言い知れぬ罪悪感に苛まれる
「明日、休みになった」
急に全然関係のないことを言われ
??という顔でアキラを見ると
アキラは優しく笑って
「明日も、一緒にいれる?」
そう言った…
涙が止まらなかった
ただひたすらアキラの胸の中で
声を出してしゃくりあげるように泣いた
何度も何度もごめんなさいと呟いて