君に恋した冬
第9章 豹変する彼
ふと脳裏にアキラの言葉がよぎる
ーー何かあったらすぐ言えよ
言えない…でも言いたい…
助けて欲しい…
アキラになら…
そう思ったら自然に身体が動いていた
携帯を取り出し電話帳からアキラを立ち上げる
Trr…Trr…Trr…Trr…
お願い…出て…アキラ…
Trr…Trr…Tr「もしもし?」
出たっ…!
『アキラ…私…』
「由梨?どうした?」
受話器からアキラの優しい声が聞こえてきて
張り詰めていたものが解け
忘れていた涙がぼろぼろと零れ落ちる
『アキ…ラ…ふっ…うぅっ』
しゃくりあげる度に蹴られた腹部が悲鳴をあげる
が、そんなことは気にならなかった
「由梨、落ち着け。どうした?何があった?」
優しく由梨を諭すアキラに
また余計に涙がこぼれ、嗚咽でうまく喋れない
『あ…あたし…大智く…うぅっ』
「わかった。今から迎えに行くから待ってろ」
その言葉にハッとする
また見られたら…
『あのね…ヒック、近所の、公園がいい…』
止まらない嗚咽をなんとか堪えながら
待ち合わせ場所を指定する
「わかった。すぐ行く」
そう言って電話は切られた。
アキラ…アキラ…助けて…
会いたい…!!
携帯だけを握り締めて勢いよくドアを開け
由梨は絶望する
「どこ行くんだよ」
嘘…でしょ…
そこにはさっき帰ったはずの大智が立っていた