君に恋した冬
第11章 裏切り
「冗談を言っている様には見えなかった…」
それもそのはず。
アキラはそんな冗談を言う人間ではないことを
由梨はなんとなく知っていた。
「でも、怖くて…なかなか動けなくて…」
『ぅ…ふ…っ』
涙が止まらない
「昨日あんたが病院に運ばれたってわかって…
本当に焦ったの…私のせいだって…」
『どうして…病院の、事…っ』
嗚咽をこらえながら問う
「あんたのバイト先に行ったの…
話をしようと思って…そしたら担架にあんたが乗ってた…」
『そう…』
「死なないでって思った…
そしたら身体が勝手に動いてて、
大智くんに全てを話したわ…」
加奈子ちゃん…
「ごめんなさい…由梨ちゃん…」
加奈子が謝る事ではないと言いたかったが
嗚咽が邪魔をして上手く話せない
「大智くんは、由梨ちゃんの代わりに
私を側に置くつもりなのもわかってる…
それでもいいから、私は大智くんといたい…」
涙ながらに加奈子は続ける
「由梨ちゃん…大智くんはもう、由梨ちゃんに
何もしないって約束してくれた」
…本当に…?
「だって全て、私の嘘と臆測でしかなかったもの…」
だが、大智に更に火がついてしまったのは
少なからず由梨とアキラが別れる現場と
キスマークを見たからだというのも明白だった
そこに今までの加奈子の嘘が重なって
心が歪んでしまったのだろう
一途な人ほど、自分の目で見たものを信じ
それに絶望する気持ちも強い
「由梨ちゃん…今思っていることを
大智くんに言ってあげて…?」
今、思っていること…?
答えは一つしかなかった
『別れて…ください…』