君に恋した冬
第12章 そしてまた一つ
1コールですぐにアキラは電話に出た
「由梨か?」
どこか焦った様な安心したような声が受話器から聞こえてくる
『うん…アキラ、私…』
久しぶりに聴いたアキラの声は
すっと由梨の心に優しく滲む
「由梨…」
切なそうに自分の名前を呼ばれて心が震える
『…会いたい…』
「…すぐ行く。公園でいいか?」
…公園?
あぁ、そう言えば前に夜に会おうとしたとき
公園を指定したんだった
もう大智は由梨に危害を加えないと約束してくれた
『うん、そこでいい』
「わかった。待ってろ」
由梨は急いで家を飛び出した
一分一秒でも早く、アキラに会いたかった
それが確かめたい気持ちからなのか
それとも他の何かなのかは由梨にはわからなかったし
考える余裕もなかった
ただただ公園を目指して走った