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君に恋した冬

第12章 そしてまた一つ





時計は深夜1時を指している


由梨はふわりと何かが身体に触れる感覚で目を覚ます



『ん…』



あれからずっとソファーで眠ってしまっていたらしく
帰ってきたアキラにベッドへ移されたところだった


「悪い、起こした?」


『ううん…おかえり』


ふとアキラの由梨を抱く手がピクッと震え
目は由梨の腹部あたりを凝視していた


『…?』


ぼーっとする頭をなんとか持ち上げ
暗闇に目を凝らして見ると
ベッドに移された時にシャツが捲れてしまっていたらしく
そこからは見るも無惨な痛々しい痣が鮮明に広がっているのが見えていた



『あ…!』




咄嗟に隠して俯いてしまう


何も言えずにいると、アキラが小さな声で


「悪かった…すぐ行ってやれなくて…」


と、悲しさや怒りが入り混じった表情で
由梨の頬を優しく撫でた


トクン…トクン…


『アキラのせいじゃないよ…謝らないで…』


そっと頬に乗せられた手に、自分の手を重ねる


『今、こうしていられるだけで、私はすごく幸せ。
ありがとう、アキラ…』


その言葉にアキラは少し泣きそうな顔をして
由梨を引き寄せ優しく抱き締めた



「ごめんな…」



そしてまた消え入りそうな掠れた声で謝った



由梨は何も言わずにアキラの背中に腕をまわし
そっと目を瞑ってアキラの胸の音を聴いていた


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