テキストサイズ

君に恋した冬

第13章 少しずつ





それからしばらくしてたどり着いたのは
小さな山小屋だった


「ちょっと冷えるからこれ着とけ」


そう言ってアキラのパーカーを手渡され黙って受け取る


『ここは…?』


「ん、ここからちょっと歩くから。」



自然に手を差し伸べられ由梨も自然にその手を取る

ドキンと胸が高鳴る


なんか…カップルみたい…?


そう思ったら少し心がチクンと痛む


本当のカップルになりたい…


アキラの気持ちは全く見えないが
優しさだけはいつも変わらず注がれている

今は…これだけで充分…


そう言い聞かせて足を進めた


遊歩道から逸れた山道をザクザクと進む
木の根が地面に這っている所は丁寧に誘導してくれ、
それ以外の場所では由梨の歩幅に合わせて
ゆっくりと歩いてくれた


『はぁ…はぁ…』


病み上がりに慣れない山道で息が上がる


「もうすぐだから、頑張って」


『うん…』


必死に山道を進み、少し開けた場所に出て
由梨は言葉を無くす



『わぁ…』



思わず感嘆の声が洩れる




ストーリーメニュー

TOPTOPへ