君に恋した冬
第13章 少しずつ
それから元来た道を戻る
その道中も手を繋いでゆっくり進んだ
そして車を停めた山小屋まで戻ってくる
「ちょっと休憩していくか?」
『え、勝手に入って大丈夫なの?』
「ああ。大丈夫」
少し不思議に思ったがアキラの言葉を信じ山小屋へ入った
長年誰も使用していないのか辺りは埃まみれで
床もあちこち腐って抜け落ちていた
歩くたびにギシギシと音が鳴り
今にも抜けてしまうのではと不安になる
「結構傷んじまったな…」
アキラはボソッと呟いた
『前にも来たことがあるの?』
「…まあな」
ふいっと顔を背けてアキラは奥にある暖炉の前の
ロッキングチェアに腰掛ける
『そう言えば、アキラの家にもあるね。その椅子』
何気なしに呟いた一言にアキラは黙ってしまう
私…何かいけない事でも言った…?
不安になったが、それを確かめる事が出来ず
話を逸らした
『ねぇ、ずっと気になっていたんだけど、
どうして加奈子ちゃんの事知っていたの?』
黙っていたアキラが顔を上げて話し出す
「ああ。あいつ前からおまえの家の周り
うろちょろしてたからな。勘だよ勘。」
『え…?加奈子ちゃんが家に?』
「何回かおまえを迎えに行ったとき、毎回見かけてたから。しかもすげぇ怖い顔して。
タダの通りすがりには見えなかったから」
『そう…だったんだ…』
全然気付かなかった…
加奈子ちゃんはそれだけ
大智くんの事で頭がいっぱいだったって事よね…
『殺すなんて…言っちゃだめだよ』
「…?」
アキラはとぼけた顔でこちらを見る
『加奈子ちゃんが言ってたよ。殺すって言われたって』
「ああ…そんな事言ったかもな」
そう言ってまた遠い目をしてアキラは黙ってしまった