君に恋した冬
第15章 交差する思い
客からの注文を受け付けが担当し、
そのメモをキッチンへと運び
用意された注文の品を部屋へと届ける
「はい!これ303ね!」
夕方から夜にかけて、キッチンは大忙しだ
『はい!』
お酒がいくつも乗ったお盆を手に指定された部屋へと伝票を確認しながら急ぐ
コンコンとノックをし、失礼しますと一声かけるが
もちろん返事はない
ドアを開けると防音が破られ客の歌声が外に洩れる
大人数でギャーギャーとはしゃいでいるため由梨の声は誰にも届かない
『お待たせしました。』
どれが誰のものかなんて解らないので適当にテーブルに並べていく
全て置き終える前に、一番端に座っていた男のひとにボソッと耳元に声をかけられる
「頑張ってんじゃん」
『!?』
薄暗い部屋で全く気付かなかった
そこに居たのは紛れもなく由梨の大好きなアキラだった
なんと髪を真っ黒に染め、長かった襟足もスッキリと綺麗にショートカットされており
いくつもあったピアスが全て外されている
誰だか全然気がつかなかった…
それくらいアキラは変わっていた