君に恋した冬
第15章 交差する思い
『あ…アキラ、どうして…』
しっと人差し指を立ててアキラは由梨に目配せをする
そして、お酒を置き終えた由梨の腕に
フワッと何かをつけて
「誕生日おめでとう」
凄く小さな声だったけど、由梨の耳にはしっかり届いた
『…!』
ビックリしてアキラを見るが、アキラはもう部屋へと視線を移していた
『…失礼…しました』
お盆を片手に部屋を出る
ふと反対側の腕を見ると、キラキラの石が所々に散りばめられた綺麗なチェーンのブレスレットがつけられていた
『アキラ…どうして知ってるの…?』
しばらくそのブレスレットを呆然と眺め、
遅れて嬉しさがこみ上げてくる
もう一度部屋に振り返ると、ドアの模様の隙間から見えるアキラがこっちを優しく笑いながら見ていた
ドキン…ドキン…
『ありがとうっ…』
聞こえていないけど、伝わったはず
由梨は目の奥がじんじんするのを抑えて
逃げるように廊下を走った
嬉し泣きなんて…初めてだよ…
アキラの優しさが何なのかわからない
でも、嬉しい気持ちは抑えられない
腕に光るブレスレットをぎゅっと握りしめて
誰にもバレないように少しだけ由梨は泣いて、笑った