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君に恋した冬

第16章 衝突

バイトが終わって、恭介と一緒に近くの公園で休憩する


ザワザワと木々が風に揺られる音が
夜の空気によく響く
ブランコに乗りながら秋の夜を静かに感じる


もう10月の夜はやはりカーディガンを羽織っていないと肌寒い



「ん」


『ありがとう…』


恭介は近くの自動販売機ホットレモンを買ってきてくれた


一口飲むと、口の中に甘酸っぱさが広がって
冷えた身体にジワッと染み渡る


意を決したように、ふぅと小さく息をついて
由梨はじっと恭介を見詰めた



『…あのね』


「知ってるよ」


『はいっ??』


口を開いた途端、間髪入れずに恭介が話し出して、思わず素っ頓狂な声が出てしまった


「あんたが他に好きな奴がいることぐらい解ってる。
そのブレスレットの話をしたときのあんた
すげぇいい顔してたから」


淡々と話し出す恭介に由梨はたじろいでしまう


「だから、逆にOKされるとこっちから振ってやろうと思った」


『…は?』


OKしたら、振った???


「他に好きな男がいるのに、手当たり次第別の彼氏作るような女なら俺はいらないから」


伏せていた目をこちらに向けて
ふっと口角を上げて笑う



「これで、あんたのこと益々好きになった」



ドキン…とまた心臓が弾んだ


面と向かって言われると、なんだかくすぐったいような気恥ずかしい気分になって思わず目を逸らす


『でも…私は、その…付き合えないよ?』


「ああ。解ってる。でも、俺が勝手に好きでいることは別に問題ねぇだろ?」



でも…それって…


『恭介は、それで…いいの?』


「は?」


キョトンとした顔でこちらを見る恭介を
由梨はしっかりと見据えて言った



『それで本当に幸せなの?』



それはもしかしたら自分自身に言った言葉だったのかもしれない




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