君に恋した冬
第16章 衝突
頭に浮かぶのはアキラだけ
『私は、そんなの苦しいよ…相手が何を思ってるかわからなかったり
自分を好きじゃないってわかってて
その人を想い続けるなんて…
私は苦しい…』
ギュッと下唇を噛みしめる
欲張りは言わないって決めたけど
側にいられるだけでいいって思ったけど…
…そんな訳ないじゃない
本当はアキラの気持ちが知りたい
私のことを好きになってほしい
欲張ってしまうの、どうしても…
自分に嘘をつくことが、苦しい…
気付けば目に涙が溜まっていた
恭介はそっと近付いてきて、優しく目尻に溜まった涙を拭き取ってくれた
「あんたも、苦しいんだな…」
優しい声でそう言われ、ただ黙って俯くしか出来なかった
ほら…やっぱり恭介は優しい
何も言わないで、何も訊かないで
そうやって理解して側にいてくれる
恭介を好きになれたらいいのに…
どうして私はアキラじゃないと駄目なんだろう…
恭介…私なんかを想わないで
他の人を好きになって
その人と幸せになって
私は…どうしてもアキラ以外は
無理みたい…
恭介は静かに泣き続ける由梨の頭をぽんぽんと優しく撫で続けた