君に恋した冬
第16章 衝突
不意に鞄から定期的な振動が聞こえてくる
ゴソゴソとそれを取り出すと画面にはアキラの文字
それを見るだけで、自分の心が少し弾むのも
今の由梨には自分が嫌な女に見える様な気がした
『もしもし…』
「今大丈夫?」
電話から聞こえてくる少し低いアキラの声
心にすーっと染み渡っていくようで
やっぱり自分はアキラしか無理なんだなと思う
『大丈夫だけど…』
「とりあえず、誕生日おめでと。
この前はちゃんと言えなかったから。」
少し笑って話しているのが伝わる
『あ…ありがとう…』
トクン…トクン…と胸が締め付けられそうになる
「明後日の土曜日、空いてる?」
『あ…うん、何もないけど』
「じゃあ空けといて。昼前には迎えに行く」
『ん…わかった』
「じゃあな」
切られた携帯をじっと見つめる
さっきまであんなに苦しかったのに
アキラと会う約束が出来ただけで
いや、声を聴いただけで嬉しくなってしまう
もう抑えられない自分の気持ちに
由梨は少し焦っていた
頭の中はいつもアキラで埋め尽くされている
関係が壊れてしまう怖さは確かにあるが
もうそれ以上に、このまま身体の関係だけが続く方が
もっと辛くなっていた
腕にはアキラがくれたブレスレットが光る
期待しても…いいの?
はぁ…とまた大きく溜め息をついてゆっくりと立ち上がり、部屋へと入って行った