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君に恋した冬

第16章 衝突


迎えたクリスマスイブ


去年と同様、空は雲で覆われていて雪が降りそうな程に寒かった


クリスマスシーズンはカラオケボックスは若い人たちで大盛況だ。


由梨も冬休みに入り、イブは昼だけバイトが入っていた。
もちろん恭介も駆り出されていた。



『216のお部屋へどうぞ。ごゆっくり』


今日と明日はみんなサンタの格好をしている。
女子はワンピース型の衣装で、男女みんなサンタ帽を被っている



客を一通り流し終えたところで、恭介がキッチンから受け付けに顔を出す



「似合ってんじゃん。チビサンタ」


ニッと少年っぽい意地悪な笑みを浮かべて言ってくる


『なっ…チビは余計よ』


クスクスとお互い笑みをこぼす



チクンと胸が痛む


恭介とこうして笑顔で話せるのも
もう今日で終わりかな…

もう、恭介の優しさに甘えてちゃいけない

しっかり断って、距離をとらないと
恭介だって苦しいよね…



ギュッと手に拳を作ってから、意を決したように話しかける



『ねぇ、今日終わってから少しだけ…話せない?』


真っ直ぐに自分を見据える由梨に、恭介も真っ直ぐに由梨を見つめ返して


「わかった。近くの公園にいるから」


そのままキッチンへ戻っていった



何を言われるのか、多分気付いている
恭介も由梨の気持ちを受け入れようとしている


『今まで…本当にありがとう…』


大智に暴力を受けた時に倒れたあと、病院で
ずっと側にいてくれた

加奈子に衝撃の告白をされたときも

誕生日も一緒に過ごして祝ってくれた


いつも隣に居てくれた恭介


友達になりたいだなんて、由梨の我が儘でしかないことが悲しかった



恋愛って、本当に残酷なんだね…


大事な人と、いつまでも仲良く居られない
人の気持ちは本当に複雑で

独りよがりは許されない



恭介…ありがとう、本当に…



もう一度心の中で呟いた










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